為替リスク管理で企業が行うファイナンシャルヘッジとは

為替リスク管理で企業が行うファイナンシャルヘッジとは

ファイナンシャルヘッジは、金融商品を利用することによって為替リスクを管理する手法です。具体的には、為替相場の変動によって生じるリスクを、為替予約や通貨オプション、通貨スワップなどの金融商品を使ってヘッジします。これにより、企業は将来の為替レート変動による損失を回避することができます。今回はこのファイナンシャルヘッジについて解説します。

企業が為替リスク管理で行うファイナンシャルヘッジの手法とは

まず、為替リスクに対するヘッジとして、為替予約を行うことができます。これは、将来の為替レートの変動によって生じる損失を回避するために、あらかじめ為替レートを確定させておくことでリスクを軽減する方法です。企業は金融機関と、一定の期間や期日においてあらかじめ決められたレートで外貨を購入する(または売却する)契約を締結します。この契約により、将来外貨を必要とする際には、あらかじめ確定した為替レートで外貨を手に入れることができます。

また、将来のある時点で、外貨を一定の価格で売買する権利を保有する通貨オプション取引もあります。為替予約が一度予約すると原則的に取消はできず、期日に受け渡し義務が生じるのに対し、通貨オプション取引は外国通貨を将来の一定時期に、あらかじめ定められた価格で売買する権利を取引します。為替予約と違って、買い手にとって不利となるような相場変動があった場合、買い手は権利を行使しない選択が可能です。

企業が保有する外貨や円貨を、為替と金利の変動によるリスクを回避するための金融商品、通貨スワップでリスクヘッジすることができます。例えば、企業が米ドルを持っている場合、通貨スワップ市場において日本円に交換することで、米ドルの為替変動リスクと金利変動リスクの双方をヘッジすることができます。

これらのファイナンシャルヘッジは、企業のリスク管理にとって非常に重要な手段であり、将来の不確実性に対処するために有効な取引と言えます。

ファイナンシャルヘッジのメリットとデメリット

ファイナンシャルヘッジのメリットとデメリットについては、大きく以下のようになります。

【メリット】

  • 為替リスクの低減:為替相場の変動によるリスクを回避することができる。
  • 予測可能な財務計画:為替リスクをヘッジすることにより、財務計画を立てやすくなる。
  • 競争力の維持:為替相場の変動によって発生する損失を回避することで、競争力を維持することができる。

 

【デメリット】

  • コストの増加:為替リスクをヘッジするためには、ヘッジ商品の取引手数料やオプション料が必要となり、費用がかかる。
  • ヘッジによる機会損失:為替相場がヘッジしたレートよりも自社に有利に動いた場合に、ヘッジをしなければよかったということになる。

 

以上が、ファイナンシャルヘッジのメリットとデメリットです。企業がファイナンシャルヘッジを行う際には、利益とリスクのバランスを考慮しながら、適切な方法を選択する必要があります。

 

日本企業によるファイナンシャルヘッジの導入状況

日本企業のファイナンシャルヘッジの導入状況は、大企業を中心に普及しています。特に、輸出入を中心に海外取引を行っている企業や、外貨建て債務を抱えている企業などは、為替リスクや金利リスクを回避するためにファイナンシャルヘッジを行っています。

ファイナンシャルヘッジにはリスクとコスト(含む機会損失)を天秤にかける必要があり、企業は自社のリスク状況や財務状況を考慮した上で、実行の有無を決定し、その上で適切なヘッジ手法を選択する必要があります。また、ヘッジ戦略の設計や実行には、専門的な知識と経験が必要となるため、企業は適切なアドバイザーと協力することも重要となるでしょう。

トレジャリー・パートナーズへのお問い合わせはこちらから

ABOUT US
戸田裕大
東京都、大田区出身、1985年生まれ、趣味と特技はテニス(全国高校総体2位)。
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。
2018年末に同行を退職し、以降は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するご支援を行う傍ら、為替相場講演会に多数、登壇している。
CEIBS(China Europe International Business School)経営学修士。