為替リスク管理で企業が行うオペレーショナルヘッジとは

為替リスク管理で企業が行うオペレーショナルヘッジとは

オペレーショナルヘッジはファイナンシャルヘッジと並んで、企業が為替リスクを管理するための方法ですが、その手法や目的は異なります。ファイナンシャルヘッジが為替市場における為替予約や通貨オプションなどの金融商品を用いるのに対し、オペレーショナルヘッジは企業活動を通じて為替リスク管理を行うことを指します。今回は、このオペレーショナルヘッジについて解説します。

 

オペレーショナルヘッジを検討すべき企業とは

為替リスク管理の手法として、オペレーショナルヘッジが適しているのは、主に以下のような企業です。

  • 輸出入を行う企業:海外との取引が多く、為替レート変動によって収益やコストが大きく左右される企業。例えば、原材料や製品を海外から調達する場合、円貨建ての契約を行うことで為替リスクを回避できます。
  • 外貨建ての債権(または債務)を有する企業:外貨建ての債権を有する企業は、為替レートの変動によってその評価額が変化します。外貨建ての債権を円貨建ての契約に変更したり、契約書に為替レートに関する条項を設けることで為替リスクを回避することができます。

 

オペレーショナルヘッジの方法

輸出入を行っている企業や海外拠点を持つ企業など、為替リスクに直接的にさらされる企業の多くが、オペレーショナルヘッジを導入しています。近年では、外貨建て債権債務を持つ企業が増加しており、これらの企業で為替オペレーショナルヘッジが導入される傾向にあります。

オペレーショナルヘッジの代表的な手法としては、海外子会社などに生産拠点を移転することによって、輸出の際に生じる為替リスクそのものをなくしてしまうといった方法が挙げられます。

また、オペレーショナルヘッジには以下のような方法もあります。

為替マリー:同一通貨の買い注文と売り注文を組み合わせることによって持ち高を相殺し、為替リスクにさらされる残高(エクスポージャー)とそのリスクを圧縮する手法です。

ネッティング:企業が外国為替市場において複数の通貨において資産や債務を保有している場合、それらの資産や債務を通貨ごとに相殺し、ネットのポジションを確定する手法です。日本の親会社と海外子会社など、同一企業グループ内で同一通貨の売買を行い、一定期間において発生した債権と債務を相殺していきます。

 

オペレーショナルヘッジのメリットとデメリット

オペレーショナルヘッジを行うことによって、企業には以下のようなメリットがあります。

  • 為替リスクを軽減することができるため、企業の安定的な経営につながる。
  • 為替取引の手数料やスプレッドなど、取引にかかるコストを節約できる。
  • 為替レートの変動に左右されない、予算管理やキャッシュフローの予測がしやすくなる。
  • 為替リスクに強いビジネスモデルを構築することができる。

一方、デメリットとしては

  • 営業戦略にも関することでそう簡単に変えることはできない
  • 為替レートの上昇や下落の幅が大きい場合、マリーを組んでも完全にリスクを回避することはできない。
  • マリーを組む際に、必要な取引の金額やタイミングを見極めることが難しい

といったことが挙げられます。

オペレーショナルヘッジに掛かる金融取引コストや手数料は発生しませんので得に感じられると思います。ただし、オペレーショナルヘッジには、実際には為替レート変動に対するリスクを完全に回避できないというデメリットがある他、特定の製品やサービスの生産や調達にかかるコストが増加する場合があります。企業は、為替リスク管理の戦略を選択する前に、それぞれの手法のメリットとデメリットを十分に検討する必要があります。

企業は自社のリスク状況や財務状況を考慮した上で、適切なヘッジ手法を選択する必要があります。また、ヘッジ戦略の設計や実行には、専門的な知識と経験が必要となるため、企業は適切なアドバイザーと協力することも重要となるでしょう。

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ABOUT US
戸田裕大
東京都、大田区出身、1985年生まれ、趣味と特技はテニス(全国高校総体2位)。
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。
2018年末に同行を退職し、以降は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するご支援を行う傍ら、為替相場講演会に多数、登壇している。
CEIBS(China Europe International Business School)経営学修士。