為替リスクを軽減するヘッジ手法【一覧】

為替リスクを軽減するヘッジ手法【一覧】

本日は為替リスクを軽減するヘッジ手法についてご案内します。

「為替リスクヘッジ=為替予約」と考えてしまいがちですが、為替予約は単なるヘッジの一手法に過ぎません。本記事を通じて御社の為替リスクヘッジの考え方を整理し、今後のヘッジ実行に役立て頂ければ幸いです。

オペレーショナルヘッジによる為替リスクの軽減

オペレーショナルヘッジとは金融商品以外で行う為替リスクヘッジのことです。オペレーショナルヘッジの理解を深めることは御社の海外戦略に役立つはずです。以下にどのような手法があるか順にみていきましょう。

為替マリー

同一通貨の支払いと受取りの割合を増やし、為替リスクを削減していく。例えば、ドル建て支払い&ドル建て回収、現地通貨支払い&現地通貨回収の組み合わせが、為替マリーに該当する。支払い・回収の時期を完全にマッチすることは困難であるため、為替リスクを完全にヘッジすることは出来ないが、為替リスクの低減&取引コストの削減に繋がる。主に日系自動車メーカーが推し進める地産地消戦略は、為替マリーの面でも効果があると言える。

決済期間の短縮

外貨建て債権・債務の決済までの期間を短縮することで、為替リスクに晒される時間そのものを短縮する。効果は極めて高いが、特に債権のサイトを短縮することは取引先に負荷を掛けることになるので、「はい、そうですか」と明日から簡単に変更する事は出来ない。契約見直しの際の交渉事項と言えよう。

製品の値上げ・調達コストの引き下げ

例えば御社に不利な方向に為替が変動した場合に製品を値上げする、御社取引先に有利な方向に為替が変動した場合に調達コストを引き下げる。ヘッジ効果は極めて高いが、取引先や顧客に直接負担を掛けることになるのでこちらも一筋縄に事は運まない。自社で抱えきれない為替変動を定義し、最終商品価格や取引先との契約に盛り込んでいく準備が必要である。

会計通貨の変更

実質的にドルの支払いや回収が大半の企業は、会計通貨そのものをドルに変更することを検討したい。実態に即した会計通貨を採用することで、過度な為替差損・差益の計上を防ぐことが出来る。中国では香港・マカオにほど近い華南地区でドル建ての仕入れ販売が多いケースが散見される。

いずれも効果は高いものの、すぐに対応出来ない手法ばかりであることがご理解頂けると思います。そこで即効性のある手法として活用されているのがファイナンシャルヘッジです。

ファイナンシャルヘッジによる為替リスクの軽減

ファイナンシャルヘッジとは、金融商品を用いた為替リスクヘッジのことです。ヘッジ手法は多数存在しますが、その中でも代表的な手法をご案内いたします。

事前両替

主に支払いサイドで有効な手法。期先の支払いが確定している取引に対して、先に外貨転してしまうことで為替リスクを完全にヘッジする。余裕資金がある会社で有効な手法。転換後の通貨が人民元のように高金利通貨である場合、短期の運用を絡めて高利回りを享受できる。

外貨借入

外貨預金が滞留する傾向にある会社のヘッジ手法として有効。B/Sの負債サイドに外貨借入を建てることで、外貨建て資産とマッチさせ為替リスクを相殺する。借入コストを負担する必要はあるが、その代わりに御社は為替リスクを低減しつつ、十分な手元流動性を確保することが出来る。

為替予約

おそらく最も有名な為替リスクヘッジ手法。本日の為替レートを基準に、決済日の為替レートを先に決定することで為替リスクを完全にヘッジする。

※ただし金利リスクは完全にはヘッジ出来ない

通貨オプション

為替予約の次に名の通った金融商品が権利の売買で通貨オプション。例えば1ドル100円でドルを買う権利を購入したと仮定する。その後、仮に実勢相場が1ドル105円になったとしても、あらかじめ定められた期間の範囲内であれば1ドル100円でドルを購入する事ができるし、仮に実勢相場が1ドル95円になったとしても、権利を放棄し、1ドル95円でドルを購入する事が出来る。
ただし当然のことながら権利をタダで購入することは出来ない。権利購入費用が基本的に前払いで発生する。そのため使用を避ける法人は多いが、それでもシンプルで有効な為替ヘッジ手段と言える。

通貨スワップ

言ってしまえば為替予約と金利スワップを組み合わせた金融商品で、為替リスク&金利リスクを一気にヘッジ出来る。それら全てのヘッジコストをレートに織り込むため、前払いの費用も発生しないことから、大変人気がある。主に海外関連会社からの外貨借入等のヘッジとして用いられる事が多い。

上記に示したのが代表的なファイナンシャルヘッジ手法ですが、他にも様々なファイナンシャルヘッジ手法が存在します。いずれのファイナンシャルヘッジも即効性があり、ヘッジ効果も絶大であるがゆえに、多くの法人が活用しています。一見完璧に見えるファイナンシャルヘッジですが、ご留意頂きたい点がございますので、オペレーショナルヘッジと絡めて以下にご留意事項としてまとめていきます。

為替リスクヘッジにおけるご留意事項

それでは、オペレーショナルヘッジの留意点、ファイナンシャルヘッジの留意点、その他留意点について順にみていきます。

オペレーショナルヘッジの留意点

  • そもそも御社の事業方針が関係する
  • 取引先との次回契約更新時の交渉のイメージを持つ事が重要
  • 業務が忙しいからと後回しにしていると、いつまでたっても改善されない

ファイナンシャルヘッジの留意点

  • ファイナンシャルヘッジの価値をある程度正しく算定出来ないと価格の妥当性がわからない
  • 金融機関との情報の非対称性をクリアにしたいのであれば金融工学を学ぶ必要がある

その他留意点

  • オペレーショナルヘッジとファイナンシャルヘッジは双方ともに重要、二つを上手に使いわけてこそ十分な為替リスク管理体制を構築出来る
  • 為替リスクヘッジの考え方そのものについて、基本的な考え方は日本でも中国でも同じ。ただし中国サイドでは各種規則があることに留意

※例えば中国の場合、人民元売りの為替予約に一定のペナルティ(レートが悪くなる)が課されていることがあるため、そのコストを勘案した上で取り組みを決定した方が良い

弊社サービスのご案内

為替リスクヘッジ手法の一覧についていかがだったでしょうか?

本記事はグローバル企業で経営企画や財務に従事する方にとってお役に立つことを目的として執筆いたしました。
従来オペレーショナルヘッジのご提案は会計系のコンサルティング会社、ファイナンシャルヘッジのご提案は大手金融機関が提供しているという認識です。弊社のセールスポイントはこの両方のご相談に一社でご対応させて頂くこととなります。最もお求めやすいプランとして、月1時間のトレジャラー顧問契約を40,000円でご提供しております(2023年9月11日現在)(事前のご面談が必要です)。激動する為替相場と正しく向き合うために、ぜひ弊社の情報をご活用頂ければ幸いです。

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それでは本日は以上となります。弊社では引き続き経営企画・財務に役立つ情報を配信していくつもりですので、引き続きフォローして頂ければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

<情報ソース・参考文献>
日本の輸出企業の為替リスク管理とその効果の検証

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