この記事では、
「為替リスク管理規定とは、どういうものか」
を、今まで750社の為替リスクの相談に応じてきた、弊社トレジャリー・パートナーズの代表である戸田が、解説しています。
現在、
「為替リスク管理規定とは何かを知りたい」
という方に、ぜひ見て頂きたい内容になっています。
この記事に目を通して頂けたら、為替リスク管理規定とは何かを社内の人に説明できるようになり、さらに自社にとって為替リスク管理規定が必要かどうかまでわかるようになっているはずです。
記事の最後では、別記事として「為替リスク管理規定の作り方」についても紹介していますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
為替リスク管理規定とは、為替リスクを管理するための規定です
結論としては、為替リスク管理規定とは、
「為替リスクを管理するために、社内であらかじめ用意しておく規定」
のことです。
為替リスク管理規定について、「為替リスク」と、「規程」の2つに分けて説明します。
まず、為替リスクについてご説明します。
為替リスクとは、「為替が変動することによる自社の損失」のことです。
なお損失には、会計上の損失と、実質的な損失があります。
まずは会計上の損失について見ていきましょう。
A社が1台の車を10,000ドルで販売したと仮定します。
この時のドル円レートが、1ドル140円であれば、会計上は140万円の売上を計上します。
ところが販売代金の10,000ドルを円転せずに持っていて、急な相場変動が発生し、1ドル100円まで円高が進んだ場合には、10,000ドルの価値は100万円となりますので、会計上はこの差額の40万円が為替差損として計上されます。こちらは財務や経理に携わる方であれば比較的イメージしやすいかと思います。
一方で実質的な損失というのは、
1億円をアメリカに投資する場合、1ドル100円だと、100万ドルの投資が可能です。
しかし、もし1ドルが140円と為替レートが円安に振れてしまった場合には、約71.4万ドルしか投資できなくなってしまいます。
この時、日本の会社であれば円で決算書を作りますし、そもそもドルに転じていませんので会計上の為替差損は発生しません。
したがって、差額の28.6万ドルは、会計上には出てこないマイナスですが、実質で考えると会社の損失ということになります。
なので、為替リスクといっても、会計上に現れるものか、実質的なものかを考える必要があります。
このように為替レートの変動に関する包括的なリスクのことを総称して「為替リスク」と呼ばれています。
そしてこの為替リスクを管理する規定のことを、「為替リスク管理規定」といいます。
実務では、より詳細に為替リスクについて考えていくのですが、例えば
- 「自社にとって為替リスクとは、いったい何なのか」を明確に定義すること
- 「具体的にどのようにその為替リスクを管理するのか」を決めていくこと
はそれぞれ、とても重要です。
要素①:まずは為替リスクとはなにかを明確化すること
会社のリスクとして、管理すべきサービスや取引の形態は、どういうものかを定義することから始める必要があります。
例えば、
「金額の大小によって、10万ドル以上の取引を為替リスクとみなし、それ以下はリスクと考えなくても問題ない」
「期間が1週間以上の取引のみを、為替リスクとみなして対策する」
など、自社の決め事として、為替リスクとはなにかを明確化する必要があります。
これを明確に定義していないと、為替リスクという言葉が、人によって解釈が異なってしまい、建設的な議論が出来ない状態になってしまいます。
なので、まずは「自社にとっての為替リスクとは、具体的に何なのか?」の、共通認識を決定することが重要です。
仮に日本円建ての契約としても、海外企業の製品を仕入れる場合には、契約金額そのものが変わってしまうリスク(実質的な為替リスク)もあります。
海外のスマートフォンを日本円で購入する場合に、円安が進むことで、本体代金そのものが値上がりしてしまう…ということは今まさに私たちの身近で起こっていることです。
為替の変動は、さまざまな取引・売買の金額に直接影響しますので、どこまでを管理するのかを定める必要があるわけです。
要素②:為替リスク管理規定とは、意思決定の社内ルールのこと
「自社にとっての為替リスクとはなにか」を明確化したあとは、具体的にどのように、その為替リスクを管理するのかを決めていきます。
例えば、「潜在的に1,000万円以上の損失が発生しそうな契約に関しては、ヘッジを行う。
「それ以下の金額の場合は、ヘッジを行わない。」というケースもあれば、「全ての為替リスクに対してヘッジを行う」という規定をつくる会社もあります。
他にも、不正を防止するために「実務担当と、承認担当者を分ける」というルールを、規定として盛り込むケースもあります。
また、「誤った取引を行ってしまった際に速やかに事態を報告する」といったルールを設けることで、二次被害を防ぐための規定を盛り込むこともできます。
さらに、ヘッジの効果の妥当性を検証するために、「四半期ごとに、行っているヘッジの妥当性を評価し、担当役員に報告する」といった定期的な効果測定を、規定に盛り込むこともあります。
このような、自社が為替リスクを適正に管理するための、ルールやアクションプランを盛り込んだものが、為替リスク管理規定です。
為替リスクが大きいと判断したら、為替リスク管理規定は作っておくべき
「独立行政法人経済産業研究所」による「2017年度日本企業の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」結果によると、上場している製造業において、社内ルールがあると解答した企業は58.6%となっています。
※解答件数140件中82件があると解答
社内ルールがある会社は増加傾向にあります。
特に最近は、円安傾向が強まっており、かつ相場の変動率も上昇しています。
ですので、相場変動による影響の大きい企業は為替リスク管理の規定を作っておいたほうが良いでしょう。
下記の記事で、為替リスク管理規定の具体的な作り方について、今まで750社の為替リスクの相談に応じてきた、弊社トレジャリー・パートナーズの代表である戸田が解説しています。
為替リスクの影響が大きくなりそうだとお考えの方は、こちらの記事も、ぜひ一読してみてください。